舞台の上でハシリは手をかざして何かを探しているようだ。森を描いた背景に布で作った鳥が飛んでくる。

上から糸でぶら下げているようだが、客席からは糸は見えないだろう。

その鳥に向かってハシリがナイフを投げる。次々とナイフにうち落とされていく鳥たち。

木になった果物も次々に地面に落ちる。

籠いっぱいの獲物を持ったハシリが歩くと、舞台の背景が回転し次に現れたのは処刑台だった。梁に吊るされた男を助けようとハシリはナイフを握りしめる。

これまでとは違ったストーリー仕立てのショーに観客は息を飲んでいる。

ハシリの投げたナイフは見事ロープを切り裂き、無実の罪で処刑されそうになっていた友を助けることができた。

ハシリは舞台を降りるとバルクロに駆け寄った。

舞台の演出を考えたのはどうやらバルクロのようだ。

サラはそれを見て複雑な気持ちになった。

ハシリのナイフ投げができなくなった原因はバルクロにあると考えていたからだ。

奇術の館に入り込むために、ハシリの出番を奪い、フィの傷を治すことでみんなの信頼を得た。

初めからバルクロが仕組んだことだったとしたら辻褄が合うとグレンと話していたことで、すっかりそう思い込んでいた。

でもバルクロはハシリが舞台に立てるよう手伝っている。

その笑顔が本物かどうか、サラには分からない。怪しいという思い込みから、バルクロのことを色メガネで見てしまっているような気がし始めていた。