「どういうこと? 大切な人って?」

「そうだ。毎日ここに来て少しずつ話をするのはどう? サラと仲良くなりたいんだ」

天使のような笑顔で微笑むバルクロにサラはため息をついた。

「私、どうしても癒しの箱が必要なの。少しの間貸してもらえない?」

「いいよ。封じの箱を返してくれるなら」

封じの箱は今はグレンが持っている。サラの一存で返事はできない。

「ねぇ、バルクロ。そんな風に話していてはいつまでたっても信用できそうにないわ」

バルクロはすっと笑みを消し俯いた。髪に隠れたバルクロの表情は分からない。

でもすぐに笑っているのだと分かった。両肩が小刻みに震えているからだ。

「ほらね、君が僕を信用していないのに僕だけが君を信用して大事な話をしないとダメなの? 本当に僕よりあいつの方が信用できると思ってる?」

「それは……」

「僕は少なくとも君を信じて全てを打ち明けたいと思ってる。でもあいつのことは正直信用できないんだ。今のところ、君はあいつの味方だろ? 僕が大事な秘密を話せば僕にとっては不利なことばかりだ」

「グレンは良い人だわ」

「彼は一度も君に嘘をついたことはない?」

「…………」

グレンは自分が領主だと言うことをサラに隠していた。それでもグレンを信じているのはなぜだろう。

「僕たちにはもう少し一緒に話す時間が必要だと思うんだ。お互いを知るためにね」

バルクロはそう言いながらサラの肩を撫でるように手を伸ばす。何もなかったその手に次の瞬間には薔薇の花が握られていた。

その花を差し出しながら、バルクロは「また明日」と微笑んだ。