とにかくよく笑う。それが男に対するサラの印象だった。貴族なんて変態か嫌味な奴しかいないと思っていた。サラがグレンにそう言ってもやっぱり笑っている。

――貴族だと思ったけど違うのかしら。

金持ちなことには違いない。

「聞きたいことって何?」

十分にお腹が満たされたところでサラが切り出すと、グレンは酒のせいか一層甘く見える目でサラに微笑みかけた。

「窃盗事件を解決に導いた占いをここで見せて欲しい」

「やっぱり私のこと疑ってるんですか」

「盗まれた宝飾品の中で発見されていない物がひとつだけある。それを見つけたい」

サルマンホテルで連続窃盗事件が起きたのはひと月程前だ。

サラがそれについて知ったのは占い部屋に来た客からだった。

サルマンホテルに泊まる予定だが、おかしな噂を聞いたため、自分の身に何も起きないか占って欲しいという依頼だった。

サラの水盤占いには男の持っている懐中時計が誰かに盗られる様子が映し出された。

それを客に伝えると、盗られる物が分かっているなら怖くはないと客はサルマンホテルに泊まることを決めた。

そして逆に犯人をその場で取り押さえたのだった。

「占いで犯人の顔は見えないのか?」

「知らない人の顔は見えないんです」

サラは赤くなってうつむいた。いつも肝心なところが見えない。

サラの占いはまだ半人前だ。フィにはよくポンコツだと笑われる。

あの客がサラの占いのおかげだと皆に証言したおかげで、サラは最奥の占い部屋に移れた。

しかし実際のところは、今日のハイディの時のように上手く誤魔化して切り抜けていることも多い。

「さっきも言ったようにまだ発見されていない盗品を見つけたい。占いで探し出すことは?」

「同じです。見たこともない物は探せません」

サラはますますうつむく。ご馳走になったのに役に立てないのでは気が重い。

「なら、持ち主に会えば占えるか?」

「占い、信じていないのでしょう?」

「占いは信じない。だが君の力は信じよう」

――私の力?

サラが眉をひそめると、グレンはまた少し笑って言った。

「魚料理は当たりだった」