サラはグレンに連れられて二階の端にある領主の部屋に入った。
「こっちだ。気分は? もし辛いようなら少し休もう」
グレンは細やかにサラを気遣ってくれる。けれど、少なくともバルクロの癒しの箱に入っていた薬は本物だったようで、サラの体はすっかり体調を取り戻していた。
先程まで苦しかったのはバルクロの術に抗っていたせいだ。
「もう大丈夫です」
サラはそう言って笑みを浮かべて見せた。
グレンはそれに安堵したように、マントルピースに歩み寄ると、そこから鍵を取り出し、奥へ続く扉を開いた。
真っ暗な闇が広がる階段に、蝋燭がポツポツと灯りを灯していく。
下へと続く階段をグレンに続いて降りていく。
やがて広い部屋に出ると、真っ先に目を引いたのは黒い柩だった。
「君がローラの娘だと知った時に、君をこの部屋に連れてくることを決めていた」
グレンはそう言ってサラを振り返り、椅子に座るよう勧めた。
「本当はリリアのオルゴールをみつけてからここに君を案内したかったんだが」
グレンは残念そうにそう言って一枚の絵をサラの前に置いた。
そこには母ローラと、おそらく幼い頃のグレンと思われる男の子が描かれていた。
「サラ、ローラはここに眠っているんだ」
「え……」
グレンは柩に目を向けている。
「リリアのオルゴールは奏での箱だと言ったよね? 眠りし者を呼び覚ます」
「眠っているって……」
「言葉のとおり、ローラは眠っている。三年前からずっとこの柩の中で」
ではバルクロの言った四つ目の箱とはこの柩のことなのだろうか。
サラは少なくとも母は死んでいるのではなく、ただ眠っているだけなのだと自分に言い聞かせた。そうしないと、薄暗い窓もない地下室のしかも柩の前だ。グレンの声が耳に届いてはいても、その内容がまるで理解できなくなりそうだった。
「こっちだ。気分は? もし辛いようなら少し休もう」
グレンは細やかにサラを気遣ってくれる。けれど、少なくともバルクロの癒しの箱に入っていた薬は本物だったようで、サラの体はすっかり体調を取り戻していた。
先程まで苦しかったのはバルクロの術に抗っていたせいだ。
「もう大丈夫です」
サラはそう言って笑みを浮かべて見せた。
グレンはそれに安堵したように、マントルピースに歩み寄ると、そこから鍵を取り出し、奥へ続く扉を開いた。
真っ暗な闇が広がる階段に、蝋燭がポツポツと灯りを灯していく。
下へと続く階段をグレンに続いて降りていく。
やがて広い部屋に出ると、真っ先に目を引いたのは黒い柩だった。
「君がローラの娘だと知った時に、君をこの部屋に連れてくることを決めていた」
グレンはそう言ってサラを振り返り、椅子に座るよう勧めた。
「本当はリリアのオルゴールをみつけてからここに君を案内したかったんだが」
グレンは残念そうにそう言って一枚の絵をサラの前に置いた。
そこには母ローラと、おそらく幼い頃のグレンと思われる男の子が描かれていた。
「サラ、ローラはここに眠っているんだ」
「え……」
グレンは柩に目を向けている。
「リリアのオルゴールは奏での箱だと言ったよね? 眠りし者を呼び覚ます」
「眠っているって……」
「言葉のとおり、ローラは眠っている。三年前からずっとこの柩の中で」
ではバルクロの言った四つ目の箱とはこの柩のことなのだろうか。
サラは少なくとも母は死んでいるのではなく、ただ眠っているだけなのだと自分に言い聞かせた。そうしないと、薄暗い窓もない地下室のしかも柩の前だ。グレンの声が耳に届いてはいても、その内容がまるで理解できなくなりそうだった。