グレンはじっとしていられずに立ち上がると、サラの様子を見に行こうと部屋を出た。

階段を降りて廊下へ出ると、向こうからやって来るサラの姿が見えた。

グレンはそちらへ足を向けかけてふと足を止めた。

サラの様子がおかしい。それに後ろに誰かがいる。

玄関の戸締りに回っていたエドニーがちょうど廊下を挟んで向こう側からやってくるのが見え、グレンは片手を上げてエドニーに止まるように合図した。そこで待機するよう手振りで示せば、エドニーは黙って頷いた。

二人の姿は死角になっていてサラからは見えていない。

グレンは足を踏み出すとサラに近寄り声をかけた。

「サラ、こんな時間にどうしたんだ? 具合は?」

歩き続けようとするサラの肩を押しとどめても、サラはグレンの顔を見ようとはしない。

「サラ?」

「グレン……、封じの箱を、見せて欲しいの」

「封じの箱を? 今すぐ?」

「ええ、今すぐに」

答えたのはいつの間にかサラのすぐ後ろに立っていた人物だった。

「……ローラ?」

サラの後ろに立っていた人物の顔を、グレンは記憶の中から引き出したローラの顔と重ね合わせる。

グレンはサラとローラの顔を見比べた。いつの間にローラがここへ来たのだろう。

サラは何故グレンの顔を見ないのか。

本当ならローラが現れて喜ばしいはずなのに、グレンにはどうしてもそれがローラの顔をした別の何かだと思えて仕方がなかった。

本物のローラなら、サラを夜着のまま歩かせたりしないはずだ。それにサラの足下は裸足だった。まるでベッドから降りたその足でここまで来たように。

その時、サラの口から何か声が聞こえた気がしてグレンは顔を近付けた。

「ち、……が、あ、」

声にならない声を絞り出すように、サラは何かを伝えようとしている。