バルクロは顔を上げ、にこりと笑って机の上に置いてあった箱を手元に引き寄せた。
「その箱、母からもらったって本当?」
両手の平に乗るくらいの小箱には、真珠の花芯を取り巻く五枚の花びらを始め、花や鳥の美しい象嵌が施されている。
留め具を外して開いた蓋の中はサラサラとした白い粉がいっぱいに詰まっていた。
「僕がローラから盗んだんじゃないかって疑ってる?」
バルクロは指先で掬いあげた粉を箱の中へサラサラと零す。月の光にキラキラと輝く粉からは甘い洋梨のような香りがした。
「母があなたのことを話すところを一度も聞いたことがないわ」
「ええー、そうなの? 僕とローラはサラが産まれる前からの付き合いなのに。なんでかな」
とぼけたように首を傾げるバルクロに、サラはその言葉は嘘だと直感した。
「質問に答えて」
「僕は盗んだりしてないよ。これは本当にローラから預かったんだ。君の代わりにね」
「私の代わりってどういうこと?」
サラの目の前で、バルクロの髪がみるみる伸びていく。波打つハニーブロンド、そしてにっこり笑ったバルクロの顔はサラと瓜二つに変わっていた。
「私を探しては駄目。この箱を持って逃げなさい」
そう言った声は母の声と同じだった。
――これが奇術?
「母は、……母はどこにいるの?」
「四つ目の箱の中だよ。多分ね」
「四つ目の箱?」
「あの時三つの箱がそろっていた。癒しの箱、封じの箱、奏での箱。三つがそろう時、四つ目の箱が現れる」
「あの時って?」
サラは声を震わせながら聞き返した。
「18年前、君が産まれた時だよ。サラ、ローラを助けたかったら箱を集めなきゃ。僕も協力する。二人でローラを助け出そう」
「その箱、母からもらったって本当?」
両手の平に乗るくらいの小箱には、真珠の花芯を取り巻く五枚の花びらを始め、花や鳥の美しい象嵌が施されている。
留め具を外して開いた蓋の中はサラサラとした白い粉がいっぱいに詰まっていた。
「僕がローラから盗んだんじゃないかって疑ってる?」
バルクロは指先で掬いあげた粉を箱の中へサラサラと零す。月の光にキラキラと輝く粉からは甘い洋梨のような香りがした。
「母があなたのことを話すところを一度も聞いたことがないわ」
「ええー、そうなの? 僕とローラはサラが産まれる前からの付き合いなのに。なんでかな」
とぼけたように首を傾げるバルクロに、サラはその言葉は嘘だと直感した。
「質問に答えて」
「僕は盗んだりしてないよ。これは本当にローラから預かったんだ。君の代わりにね」
「私の代わりってどういうこと?」
サラの目の前で、バルクロの髪がみるみる伸びていく。波打つハニーブロンド、そしてにっこり笑ったバルクロの顔はサラと瓜二つに変わっていた。
「私を探しては駄目。この箱を持って逃げなさい」
そう言った声は母の声と同じだった。
――これが奇術?
「母は、……母はどこにいるの?」
「四つ目の箱の中だよ。多分ね」
「四つ目の箱?」
「あの時三つの箱がそろっていた。癒しの箱、封じの箱、奏での箱。三つがそろう時、四つ目の箱が現れる」
「あの時って?」
サラは声を震わせながら聞き返した。
「18年前、君が産まれた時だよ。サラ、ローラを助けたかったら箱を集めなきゃ。僕も協力する。二人でローラを助け出そう」