何度目かに目が覚めた時、サラは誰かに手を握られていることに気付いた。

重い瞼を持ち上げて目を凝らせば、そこにはさらりと肩に流れる金色の髪、そして青い瞳の美しい青年バルクロがいた。

冷りとしたその手を思わず振り払ってしまったのは、グレンの言葉に影響されたためばかりではない。

部屋は月明かりが差し込み青白く浮かび上がっている。

開け放たれた窓からは湿った風が流れ込んでいた。

「……どうしてここに?」

「もちろん君を治すためさ。言ったろ? 僕の持っている箱にはどんな怪我も病気もたちどころに治してしまう魔法の粉が入ってるって」

「今私にそれが必要だと思ったのは何故?」

「何となくそんな気がしたんだ。この間は顔色が良くなかったし、最近会いに来てくれなかっただろ?」

「もうその粉を私に使ったの?」

サラは目眩がしそうなのを堪えながら尋ねた。バルクロはこんな夜更けに明かりもつけず、初めて訪れたであろう部屋の中で何故こんなに落ち着いていられるのか。決して寒くはない部屋なのに、サラは背すじに悪寒が走るのを止められなかった。

「まだだよ。君にも見せてあげたくて、目が覚めるのを待っていたんだ」

「女性が寝ているところを勝手に覗くなんて悪趣味だわ」

サラはそう言ってバルクロを睨んだ。

「ごめん、昼間来た時には入れてもらえなくて、庭からこっそり入ったんだ。覗くつもりじゃなかったんだ。サラのことが心配だったから」

項垂れるバルクロにサラはそれ以上強く言えず、箱の中身に興味を引かれていることもあって、肩の力を抜くようにため息をひとつついた。

「箱の中身を見せて」