毎日洗濯室に持ち込まれる領主の洗濯物の臭いは、グレンと同じ香水の臭いだ。

もしそうならどうだと言うのだろう。サラにも分からない。ただ、隠されていることがグレンのサラへの信頼の度合いを示しているように思える。

「サラ……」

「いえ、ごめんなさい。違いますよね」

グレンの顔から笑みが消えたことでサラは急に怖くなってそうごまかした。

たかが占い師の自分を領主が信頼するなど有り得ない。隠しているなら知らない振りをすべきだ。そう思い直して、サラは歩き出す。

風にはためくシーツの波をくぐるように進めば、眩しさに目がくらみそうになる。

不意に腕を引かれサラはグレンに抱きしめられた。

ボタンを外した胸元から汗と香水の混じった香りがして、一層目眩がしそうになる。

グレンの硬い胸の下で鳴る鼓動の早さに、サラの心臓もこれ以上ないほどに早い鼓動を刻んでいる。

グレンの手がサラの髪の中に潜る。引かれるように上を向けば、グレンの顔がすぐそこにあった。

腰を引き寄せられ、耳元に囁かれた言葉にサラは息も忘れてグレンを見つめた。
 
「君を離したくない」

好きだ、吐息とともに紡がれた言葉はサラの唇の中に消えていった。