二人は川沿いの土手に上がり並んでそれを食べた。

眼下に流れるソマン川に陽の光が眩しく跳ねている。

菓子は甘くてサラの疲れを癒した。

「あの奇術師と知り合いなのか?」

「前にいた街で少し……」

「調子が狂うな」

「え?」

「少し前なら「アシュリー捜査官には関係ないでしょ!」って目くじら立ててたところだ」

「私、そんなに感じ悪いですか?」

サラは少しムッとしながらアシュリーにそう問い返す。

アシュリーはいつの間に食べ終えたのか、包み紙をクシャっと丸めてズボンのポケットに突っ込むと、両手を後ろについて空を見上げるように上を向いた。

「感じが悪いっていうより、強がってたって感じだな。メイドの仕事を始めてからは借りてきた猫みたいにおとなしい。仕事を紹介した俺が悪いことをしたような気分になる」

「そんなことありませんよ。仕事を紹介して頂いて感謝してます」

「確か、まだ十七だよな? そんな早くにおとなになろうとしてもつまらんだけだぞ」

アシュリーはそう言うと、サラを見てニヤリと笑った。

「帰るんなら俺の愛車で送ってやるよ」

土手の下に停めた自転車を親指で指すと、アシュリーは立ち上がった。

サラもついで立ち上がると、土手を降りた。柔らかな風が草の臭いを運んで吹き抜けていく。

「アシュリー捜査官に買ってもらえて良かったわね」

サラは自転車に向かってそんなことを呟いていた。