バルクロについて話すハシリの目は輝いている。その声の感じから少なからずバルクロに憧れを抱いていることがうかがえた。

「すごい人なのね」

サラはハシリの言った綺麗な箱が気になりながらもそう相槌を打つ。

部屋に入って来た時に比べて落ち着いてきたのか、ハシリは笑顔で頷いた。

「でも、人間を的にしようって言ったのがバルクロだから奇術の館には居られないって言うんだ。みんなバルクロに居て欲しいと思ってるんだよ。僕だって……。ねぇサラ、僕またナイフを投げられるようになるかな」

ハシリは開いた自分の両手を見つめて不安そうに呟いた。

「もちろんよ。ハシリがどんなにたくさん練習してたか知ってるわ。フィ姉さんだって怒ったりしていないでしょ?」

サラはハシリの両手を包むようにしてそう励ました。

その時、ノックの音とともにドアが開いた。

戸口に立っていたのはグレンだった。サラとハシリの姿を見て一瞬動きを止め、すぐに大股で歩いてくるとサラの腕を掴んで立たせハシリに向き直った。

「悪いが今日の占いは終わりだ。今から一緒に行きたいところがある」

グレンは有無を言わさない口調でそう言うと、サラの手を引いて連れていこうとする。

グレンに会うのは一週間ぶりだろうか。サラは戸惑いながらその手を振り払った。

「いきなり来て何ですか? ハシリは占いに来たんじゃなくて私に会いに来てくれたんです」

一週間も音沙汰無しだったのに、いきなり来て挨拶もなく、サラの都合を尋ねようともしない。そんなグレンをサラは睨むように見上げた。