ようやくメイドたちの列が途切れ一息ついたところに、またひとり客がやってきた。
一度に数人を占ったせいで、サラは目眩と頭痛に襲われかけていた。
もう今日は占いはできそうにない。
「すみません、今日はもう……」
そう言って立ち上がったサラは、戸口に立っていた人物を見て目を見開いた。
「ハシリ! どうしたの、こんなところまで」
奇術の館でナイフ投げを得意としていたひとつ歳下の少年、ハシリだった。
ハシリはサラを見て顔を綻ばせたものの、どこか不安を隠しきれない様子で部屋に滑りこむように入ってきた。後ろ手にドアを閉めると、遠慮がちに一歩進んでそこで足を止めた。
「サラ、……久しぶり。こんな立派な部屋で占い師をしてるなんて思わなかったよ」
「ハシリ、何かあったの?」
サラは立ち上がり机を回ってハシリのそばに寄ると、その顔を覗き込んだ。
「サラ、奇術の館に新しい奇術師が来たことを知ってる?」
「いいえ。その人がどうかしたの?」
ハシリは顔を歪めて俯いた。左手で右の肘を強く抑えている。
「僕、ナイフ投げで失敗したんだ」
ハシリは声を震わせた。誰よりも練習熱心で、これまで本番でハシリが失敗したところをサラは見たことがなかった。それでもやはり完璧な人間などいない。
「誰にだって失敗する時はあるわ。私なんか失敗ばかりよ」
サラはハシリを励まそうと明るくそう言った。けれど、ハシリは今にも泣きそうな目でサラを見ると、絞り出すように言った。
「人を、……傷付けたんだ」
サラはそっとハシリの腕をとると、窓の近くにある椅子に座らせた。
一度に数人を占ったせいで、サラは目眩と頭痛に襲われかけていた。
もう今日は占いはできそうにない。
「すみません、今日はもう……」
そう言って立ち上がったサラは、戸口に立っていた人物を見て目を見開いた。
「ハシリ! どうしたの、こんなところまで」
奇術の館でナイフ投げを得意としていたひとつ歳下の少年、ハシリだった。
ハシリはサラを見て顔を綻ばせたものの、どこか不安を隠しきれない様子で部屋に滑りこむように入ってきた。後ろ手にドアを閉めると、遠慮がちに一歩進んでそこで足を止めた。
「サラ、……久しぶり。こんな立派な部屋で占い師をしてるなんて思わなかったよ」
「ハシリ、何かあったの?」
サラは立ち上がり机を回ってハシリのそばに寄ると、その顔を覗き込んだ。
「サラ、奇術の館に新しい奇術師が来たことを知ってる?」
「いいえ。その人がどうかしたの?」
ハシリは顔を歪めて俯いた。左手で右の肘を強く抑えている。
「僕、ナイフ投げで失敗したんだ」
ハシリは声を震わせた。誰よりも練習熱心で、これまで本番でハシリが失敗したところをサラは見たことがなかった。それでもやはり完璧な人間などいない。
「誰にだって失敗する時はあるわ。私なんか失敗ばかりよ」
サラはハシリを励まそうと明るくそう言った。けれど、ハシリは今にも泣きそうな目でサラを見ると、絞り出すように言った。
「人を、……傷付けたんだ」
サラはそっとハシリの腕をとると、窓の近くにある椅子に座らせた。