サラは朝5時から昼の1時まで、領主の館で洗濯の仕事をしている。

主一家の服から使用人の服、シーツやテーブルクロスに至るまで、毎日大量の洗濯物が持ち込まれる。洗っては干し、乾いたらアイロンをあて、畳んで部屋付きのメイドに引き渡す。その繰り返しだ。

そんな中、サラの天気占いが百発百中だとランドリーメイドたちの間で褒めそやされるようになっていた。

大量の洗濯物は外に干すのだが、雨の日には屋根の下に干さなければならない。途中で雨に降られれば洗い直しになるため、天気は重要な関心事なのだ。

立派なゲストルームに職場を与えられ、ともすれば妬みを買いそうな状況も天気占いのおかげで救われている。

「ねぇサラ、天気以外にはどんな占いができるの?」

仲間内では一番歳の近いティナが隣りに来てサラに尋ねた。

「よく頼まれるのは恋占いとか、失せ物探しよ」

ティナは何か占って欲しいことがあるのか、詳しく話を聞きたがった。

「恋占いって、例えば相手が自分のことをどう思っているかとかも分かるの?」

「はっきりとは分からないけど、例えば二人が楽しそうに話をしてるところが見える時は上手くいきそうだとかそんな感じよ」

二人が話していると、あっという間に周りに人集りができた。

「私も占って欲しい〜」

そんな声があちこちから上がる。

「実はずっと気になってたの。でも占い部屋は予約制なんでしょ?」

ティナの頼みを聞けば、他のメイドたちの頼みも聞かざるを得なくなる。

それでもサラは笑顔で答えるしかなかった。

「今日は予約が入っていないので大丈夫よ」

その日の午後、「サランディールの占い部屋」とプレートの掛かった部屋の前にはメイドたちの列ができていた。

それを見たマチルダが怒って追い払っても、いつの間にかまた集まってくる。

午後はハイデイの店にレターセットを買いに行く予定だったが、今日はとても行けそうになかった。