「リリアにちゃんと話せば分かってくれるはずよ」
肩を落とすアレンの背中を撫でながら、サラが励ますように声をかける。
グレンがリリアを林の入り口まで連れて来ると、アレンはリリアの前で跪いた。
「ごめんなさい。僕、リリアと一緒にいたかっただけなんだ。リリアの大切な物を失くしてごめん。本当にごめんなさい」
泣き崩れるアレンを見下ろしていたリリアは、その肩に手を伸ばした。
「アレン、パパがね、もう林に行っちゃ駄目って言うの」
アレンはびくりと肩を震わせた。
「だからね、アレンがうちに遊びに来てくれる?」
アレンがはっとしたように顔をあげると、リリアはにこりと微笑んだ。
「パパに紹介するから一緒にホテルに来て」
リリアはアレンの手を引いて立たせると、二人は一緒に並んで歩いていく。
その背中を見送ってサラはほっと胸を撫で下ろした。
「怪我は?」
グレンがサラの体を確認するように服の汚れを払いながら尋ねた。
「私といるとあなたは怪我ばかりするみたい」
サラはグレンを見上げて呟いた。
「逆じゃないのか?」
グレンはサラの言葉にそう返す。
二人は互いに笑いあった。
「早く手当てしよう。君の血の臭いを嗅ぐとまたおかしくなりそうだ」
「その話は忘れる約束でしよ?」
サラが軽く睨むようにしてそう言うと、グレンはサラの耳元に顔を寄せて囁いた。
「君のことは何一つ忘れられそうにないよ」
――それってどういう意味?
サラがグレンを見上げる。そこにはあの甘やかな眼差しがサラを見つめて微笑んでいた。