昼前から庭には次々とテーブルや椅子が運ばれ、真っ白なテーブルクロスが日の光に眩しく輝いていた。

軽食や飲み物でテーブルの上がいっぱいになる頃には、客人たちも庭に出揃っていた。

グレンは朝から忙しく兄姉たちとの協議を繰り返していた。

サラはテーブルのセッティングを手伝おうとしたが、エドニーから子どもたちの相手を頼まれ、庭の片隅にテーブルを置いて請われるままに占いを繰り返していた。

ハンナとリリー、ジェーンは相変わらず三人揃ってサラの前に陣取っている。

「エレインは急に用ができたって朝早く帰ったそうよ」

リリーがツンとした表情でそう言うと、ジェーンがすかさずしたり顔で言った。

「やっぱり吸血鬼の噂に恐れをなしたんじゃない? 」

「きっとグレン叔父様に相手にされなかったのよ」

リリーはやはり人をよく見ている。

ハンナは吸血鬼の言葉にも驚くことなく、

「グレン叔父様にはもう好きな人がいるわ」

とリリーとジェーンを交互に見ながら言った。サラと目が合うとふたりはどちらからともなく唇の前で人差し指を立てた。昨夜のことはサラとハンナだけの秘密だ。

そこにハイディとアシュリーがやってきた。

「領主様の好きな人って?」

ハンナの声が聞こえていたのだろう。ハイディはそう言ってからしまったというように眉を下げてサラの顔をうかがった。グレンから領主だと言うことを内緒にするように言われていたのに、つい口を滑らせてしまった。

「そんなの言われなくてもあいつを見ていれば分かるさ」

とはアシュリーの弁だ。

アシュリーの見やった先で、グレンがこちらに気付いて片手を上げた。まだしばらく席を外せそうにない。

リリアとアレンもお呼ばれしていたらしく、昨夜とは違って正装に身を包んでふたり仲良く歩いてきた。

「ふたりとも、昨日はありがとう」

サラがそう言うと、ふたりは顔を見合わせて笑いあった。

「怖かったけど楽しかった」

「ね!」

サラはその言葉にほっと胸を撫で下ろした。

「ふたりにはまた助けてもらうかもしれないけど、お願いできるかしら」

「もちろん!」