程なくしてアレンが守衛小屋に連れてこられた。その隣にはリリアの姿もあった。

「アレン、リリア! こんな時間に呼び出してごめんなさい」

駆け寄ってくる二人の体をサラは膝を落として抱きしめた。

「大丈夫! 今日はリリアのうちで泊まる予定だったんだ。何か僕に頼みがあるんでしょ?」

「もしかしたらすごく怖いことかもしれない。それでも力を貸してくれる?」

アレンはリリアと顔を見合わせると、サラににこりと笑って見せた。

「僕、頑張ってみるよ」

「わたしも手伝う」

仲の良い様子に、グレンも身を屈めてふたりの頭を撫でた。

「アレンにしかできないことなんだ。君たちの安全は俺が守る」

サラはこれから黒狼に会って話をして欲しいことをアレンに伝えた。

「じゃあ僕、こっちの姿の方がいいね」

そういうとアレンはみるみる灰色の毛に覆われた狼の姿になった。

グレンを先頭に四人は地下への階段を下りていく。下の部屋にはバルクロとローラの姿もあった。

「お母さん!」

サラはローラに駆け寄った。

「どうやってここに?」

「エレインの魔法陣を復元したの。少し時間がかかってしまったわ」

「上の様子は? エドニーさんたちは大丈夫かしら」

地下に下りて来てからグレンの部屋の様子がどうなったのが気になっていた。

「しばらくは大丈夫よ。誰も部屋から出られないようにしてあるから。それよりエレインを止められなくてごめんなさい」

「エレインは血を失い過ぎてる。癒しの箱を取って来ないと……」

ローラは焦るサラの両手を握りしめて左右に首を振った。

「箱がなくてもエレインは助かるわ。魔法に頼りすぎるのは良くないことよ」

「それでお母さんも癒しの箱を使わなかったの? お母さんがあの箱を持っていたんでしょ?」

「あの時は自分が病に罹っていると知らなかったの。箱はあなたに預けた後だった。とにかく今は彼らをどうにかしましょう」

バルクロはローラにぴたりと寄り添って立っていた。