サラは考えを巡らせながら再び壁の絵を見やった。

蝙蝠、猫、銀狼……。その時ふとある考えが閃いた。

「アレン……」

無意識に呟いた言葉に、グレンと二人目を見合わせた。

「アレンならさっきの黒狼と話ができるかも」

「すぐ呼びに行かせよう」

アレンはまだ子どもだが人狼だ。それも容易く変身できるところからその血は濃いと思われる。

人間の言葉が通じなくても、人狼同士なら話が通じるかもしれない。そんな期待が湧き上がる。

まずは黒狼と話をして、他の魔物たちが人里へ飛び出していかないよう率いてもらうことができれば、あちらの世界へ送り返す事ができなくても、ひとまず猶予ができるだろう。

グレンは外への出口があるという三つ目の部屋に入ると、壁に隠されていたドアを開いた。そこには上に登る階段が続いていた。

真っ暗な階段を蝋燭の光を頼りに登れば、天井に突き当たった。

グレンがそこをノックすると、やがて上からゴトゴトと何かを動かす音が聞こえ、天井が四角く切り取られたように開いた。

こちらを覗き込んでいたのは、守衛のブルックスだった。

ブルックスはグレンとサラを見て目を丸くしながらも、慌てて二人を守衛小屋へと引き上げてくれた。

バルクロは地下で部屋の入り口を見張るために残っている。

「旦那様、ここからお出でになるのは久しぶりですね」

そう言ってブルックスは笑っている。サラがグレンの横顔を見上げると、

「子どもの頃はよくここから出入りしてたんだ」

と言い訳するようにサラの耳元に囁いた。すると、サラの中にエドニーやアシュリーと隠れんぼをして遊ぶグレンの姿が浮かんできた。

ブルックスの懐かしそうに目を細める様子から、サラはグレンの幼い頃の様子をまるで傍で見てきたかのように感じることができた。

「ブルックス、すぐにサルマンホテルへ使いを出してくれ。リリアの友達のアレンをここに呼んで来て欲しい。できるだけ早く」

「かしこまりました」

ブルックスは短く返事をすると、すぐに部屋を出ていった。杖を使っているが、少しも危なげのない動きだった。