それを合図にしたかのように、部屋の中に突然風が吹き荒れた。窓はすべて閉まったままで、どこから風が吹いているのか分からない。

風は徐々に速さを増して渦を巻き、部屋中の物を舞いあげていく。

風は部屋の中心へ向かって円を描くように吹いている。そのままでいると風に飛ばされた紙や写真立てなどが飛んできて危険なため、四人は身を屈め部屋の隅へと避難した。

そこへどこからともなく場違いな笑い声が聞こえてきた。

声のする方を振り返ったサラたちは、肩を揺らして笑うエドニーの姿に目を留めた。

エドニーは箱を手に立っていた。その蓋は開かれ、中にいるはずの小さな悪魔はエドニーの肩に乗っている。

グレンはエドニーから目を離さず、サラたちを庇うように間に立ちはだかった。

姿形はエドニーでも、この状況下でエドニーが笑っていることなど有り得ない。

「ローラ、久しぶりね。随分と探したのよ。まさかこんなところに隠れていたなんて」

エドニーの口から発せられたのは、エレインの声だった。

部屋の中を吹き荒れる風が一ヶ所に集まっていく。渦巻く風の中心にぽっかりと穴が空いたように暗闇が生まれていた。

「三つの箱が同時に開いたんだ……」

バルクロが呆然としたように呟いた。開ける必要のなかった封じの箱をエドニーが、いや、エレインに操られたエドニーが開いたのだ。

「ローラが目覚めるのを待ってあげたのよ。この光景を見るのは18年振りかしら?」

と再びエレインの声がした。

「何が起きている? エドニーは操られているのか?」

サラをかばいながら、グレンがバルクロに問いかける。

「あの風の中心は異界へ繋がっている。すぐに魔物たちが出てくるはずだ」

「どうやって閉じるんだ?」

グレンが尋ねる声もバルクロには届いていなかった。

「逃げろ! 早く!」

バルクロはローラとサラの背中をドアの方へ押しやった。