ローラや生まれた子どもの顔を見ることもできず、暗い箱の中で長い長い時を過ごした。

次に外に出られたのは、ローラのおかげだった。

「ローラは何度も僕を救ってくれたんだ」

バルクロはそう言ってサラを愛おしそうに見つめた。

「あなたは、ダン・ブラウニング、私の……」

サラは声を震わせた。

「こんな父親でごめん。サラの前に姿を表せた義理じゃないのは分かってる。こんな見た目で君に父親だって名乗っても信じて貰えないのも。でもローラを助けたい気持ちは本当だ」

サラは複雑な気持ちでバルクロの瞳を見つめ返していた。

初めてベイルの街で会った時、不思議に心を惹かれた。その綺麗な見た目のせいだと思っていたけれど、まさか血が繋がっていたとは。

なら、自分は父親に恋していたということになる。母と好みが似ていてもおかしくはない。それでもすぐには受け入れられない。

実際、見た目は二十代半ばくらいのグレンと変わらない歳に見える。

けれど、実際には四十歳くらいだということになる。

「見た目が若いのは妖精の血を引いているせい?」

そんなことを尋ねたいわけではないのに、頭の中が混乱していて、口をついて出たのはそんな問いかけだった。

「そうだね。君はローラに良く似ている……」

バルクロはサラの頬に手を伸ばした。死んだと思っていた父は初恋の相手で、今目の前にいる。

サラは助けを求めるようにグレンの方を見ていた。

グレンは眉をひそめたまま、じっとバルクロの話を聞いており、やがて諦めたようにため息をついた。

「その話が本当かどうか、確かめるにはローラを目覚めさせるしかない」

グレンの言葉にサラも頷く。

少なくとも、バルクロの瞳に嘘をついているような後ろめたさは見えない。