侑李に渡したプレゼント。侑李が私が来る前に説明書を全て読んだらしく、「早くしようと」と私を急かした。
説明書を読んでいない私は、あまりルールが分からず。

「ちょっと待ってよ〜」

「早く早くっ」

「どれするの?パズル?」

「これ、これ楽しそうだよっ」


いろいろな遊び方ができる家庭用のゲームを、夜ご飯が運ばれるまでし続け、夜ご飯を食べたあとも、ゲームを続けた。


「また明日もしようね!」

と、可愛い笑顔をする侑李の頭を撫でた。

侑李が可愛くて可愛くてたまらない·····。


早く侑李が元気になればいいのに。
侑李はこのまま、ずっとこのままなのだろうか。先生は何度か侑李の手術をしているけど、それは一時のもの·····。


侑李の心臓は、いつ·····悲鳴をあげるのだろうか·····。

侑李の笑顔をみるたび、それが怖くて、私の心が潰れそうだった。






夜ご飯も食べ終わり、ダイニングテーブルの机を片付けている最中だった。


「そういえば、フジのやつ、なったんだろ?」

お風呂上がりの兄がタオルで髪を拭きながら、浴室から出てきて。


兄の言っている意味がさっぱり分からず、「え?」と、聞き返した。


和臣がなった?
何に?
なったと言われても·····。


「総長になったんだろ?」


総長·····。
暴走族の時期総長だと、言われていた和臣。
本人も「そう言われてる」と言っていた。

「なんだよ、知らなかったのか?」


黙り込む私に、不思議そうに聞く兄。


「うん、和臣とはそういう話しないから·····」

「へえ·····そうなのか。クリスマスの暴走が終わったあと、引き継ぎがあったみたいだな」


クリスマスのあと?
和臣が何度も会えなくて謝ってきた日·····。
だったら、25日の朝にはもう総長という存在になっていたということ。

そんな素振りは全く見せていなかった。


「そうなの·····」

「フジ、マジでお前の事考えてんだな」

「え?」


兄は髪からタオルをはなし、ドスっとソファに座り込んだ。


「俺も、好きな女をそういうのに、巻き込みたくねぇしな」

巻き込みたくない·····。


「けど、やっぱり、見せびらかしたい気持ちもある。フジの立場なら、特に」

「和臣の立場ならって?」

「だから、それほど、密葉を大事に思ってんだよ」


やっぱり、兄の言うことがよく分からなくて。



「私、関わった方がいいの·····?」

「何でそうなるんだよ、そんな事したら、フジが怒るぞ」


和臣が怒る?


「お兄ちゃん、言ってる意味分かんないよ·····」

「そのままでいいっつってんの、お前は·····、フジに守られてばいんだよ」


和臣に守られてれば·····。


「だから密葉も、フジを信じろよ」


和臣と同じような事を言う兄·····。

私は、和臣を信じてるよ·····。

ずっと一緒にいたいから·····。

でも、私は·····、兄や和臣の目が見れば、信じていないように見えるのだろうか·····。