しばらくして、萌黄が広間へとやって来た。

「まあ、直元様のお召が遅いと思っておりましたら、こんなところにいたとは。」

「申し訳ない、萌黄殿。」

直元は、咄嗟に謝った。

「直元様は、悪いのではありませんよ。謝るのは、父の方です。」

「ははは。これは参った!」

娘からも言われているのに、悪びれる事もしない実重。

「萌黄も飲め。二人とも、結婚おめでとう。」

聞いていた結婚の儀とは違うが、父親として娘の結婚を祝ってやりたいのだと、直元は思うようにした。


そして、夜も遅くなった頃、酔った実重は昔話を、始めた。

「いやあ、こうしていると、婿殿の母君、こより殿に求愛した事を思い出す。」

直元は、もう少しでお酒を吹き出しそうになった。