そして、直元と萌黄の結婚の日が、やってきた。

直元が今出川家を訪れると、そこには沢山の贅沢な料理が並べられていた。

「さあさあ、婿殿。お座りになって、お酒でも。」

結婚の儀には、萌黄と二人で、歌を交わしながら、夫婦の契りを交わすものだと、父からは聞いていた。

「はい。では、少々いただきます。」

「少々と言わず、大いに飲みなされ。」

聞いていた事は違う。

萌黄と初めて会った時もそうだったが、今出川家は、世のしきたりというものを、あまり気にしない家なのだろうか。

「あの、萌黄殿は……」

「そうだな。二人の結婚の儀なのだから、萌黄も呼ぶか。おい、誰か。萌黄を連れて来い。」

まさか、結婚の儀に父親が入ってくるとは。

直元は、心臓がバクバクしてきた。