そして、直元の母・こよりは、この縁を不思議に思っていた。

「母は昔、実重殿に求愛されてね。」

「えっ⁉︎萌黄の父上殿にですか?」

自分の母親が、結婚相手の父に口説かれていたなんて、直元にとっては衝撃だ。

「でも、父上様の方が良くて、断ったのですよ。」

母・こよりは昔の話を、思い出しては恥ずかしそうに笑った。

「今は、実重殿の家も小さくなったけれど、父上様の大事なお友達ですからね。萌黄殿を大切にするのですよ。」

「はい。」

家の勢いは、今出川家にはなかった。

直元は、今出川家が父に持ち掛けた結婚話だと思っていた。

それが実は、父から持ち掛けた話だと知った時は、さすが父上よと見直した。

子供同士が結婚すれば、勢いを無くした今出川家にも、援助することができるようになるからだ。