直元は、目を瞑った。

自分の父親からは、そんな事聞いていない。

何回か会ってから結婚を決めてもいいと言っていたが、顔も見えないのに、どうやって結婚を決められよう。

「そうでしたか。そう言った作法も知らずに、申し訳ありませんでした。」

「いえ!お気になさいませんよう。」

しばらく無言のままで、御簾納を挟んで顔を合わせる二人。

「では、今日のところはこれで……」

直元が立ち上がった時だった。

「お待ちください。」

萌黄が御簾納を少し開けた。

「どうぞ、中へ。」

御簾納の中に誘う萌黄の手は、細くて綺麗だった。

それに誘われて、直元は御簾納の中に入って行った。

そこには、色白の比較的綺麗な顔をした娘が座っていた。