隣の家の聞き慣れたチャイムを鳴らすと、ガチャリとドアが開く。

「ちいちゃんおかえり」
「ただいま! なおくんもおかえりなさい」
「うん、ただいま」

精悍な顔に成長したなおくんがひょこっと顔を出して、出迎えてくれた。

お邪魔します、と玄関に入ると、見慣れない赤のハイヒールがなおくんのスニーカーの隣のに並んでいる。

「(おばさんの趣味、変わった……?)」

ひとりっ子のなおくんが履くはずはないし。
眉間に皺を寄せて、その持ち主をうーんと考えてしまう。

「ちいちゃん、上がんないの?」
「あ、ごめん」

なおくんはスリッパを準備してくれて、わたしがローファーを脱ぐのを待っている。

「あのね、なおくん、話したいことがたくさんあってね、」

リビングに向かう廊下で、久しぶりに会えた嬉しさを抑えきれないでうきうきと話し出すわたしを、なおくんは昔と変わらない優しい瞳で見つめていた。

なおくんの前だと、つい子どものような気持ちに戻ってしまう。