なおくんの話を聞き終わる頃には、わたしの涙も止まりかけていた。
さっきまでは、もうこのまま涙が止まらないかも、なんて思っていたのにな。
「ちいちゃんがいてくれたから夢を叶えられたんだよ」
「わたし……?」
「そう、ちいちゃんと出会ってなかったら先生になろうなんて思いもしなかっただろうから」
「…………」
「ありがとう、ちいちゃん」
まっすぐな目をしたなおくんはいつだってわたしより大人で、少しずるい。
だって、そんな風に言われてしまったら、応援するしかなくなるじゃん。
「……がんばってね、なおくん」
「ありがとうっ」
まだ完全には納得していない、不貞腐れた顔のままそう言うと、なおくんはそっと抱きしめてくる。
その声はほんのちょっぴり震えていた。
抱きしめられたわたしはというと、久しぶりになおくんの顔がこんなに近くにあって、内心大パニックだった。
どくんどくん、心臓が音を大きな音を立てているのが分かる。
次第に速くなる鼓動に気づかれたくなくて、早く離れてほしいと思いながらぎゅっと目を瞑った。
「(わたし、なおくんのこと……)」
ずっとずっと、好きだったんだ。
お兄ちゃんとしてではなく、異性として。
傍にいたから気づかなかったけれど、本当はずっとなおくんに恋をしていた。