「彼女ができた」


ドクン、と跳ね上がった心臓が、途端にグッと掴まれたように苦しくなった。震え始めた唇を噛み締め、陽ちゃんに顔を見られないように背ける。


「ずっといいなって思ってた子がいて、今日俺から告白した」

「それって実行委員の人……だよね?」


彼の口から語られることが耐えがたくて平静を装って言えば、「え……」と戸惑いの声が落とされる。


知らないはずがない。
陽ちゃんが実行委員の仕事を楽しそうにしていたことも、その理由も。
だって、私はいつも彼を見ていたから。


「陽ちゃんのことなんてお見通しだよ。生まれた時からずっと一緒なんだから」

「……そっか」

「じゃあ、明日からは一緒に登下校できないね。彼女に誤解されちゃうもんね!」


せっかく明るく振舞っているのに、「ごめん」なんて申し訳なさそうに言われてしまったら泣きそうになる。せめてまだ泣きたくなくて、精一杯笑って見せた。


「ちょうどよかった! 私もそろそろ彼氏が欲しいと思ってたし」


眉を下げて笑った陽ちゃんは、きっと私の想いを知っている。
だけど、気づかないふりをしているだけ。