ずっとずっと、そうだった。

陽ちゃんへの想いを口にしたことなんてないのに、彼はまるですべてを見透かしているようにギリギリのところで線を引く。


登下校も一緒にしてくれるし、徹夜でゲームもするけれど、いつからかふたりきりで出かける回数は減って、昼も夜も同じ部屋で眠ることは許されなくなった。
夜にベランダで会う時間も、少しずつ短くなっていった。


私の想いには応えられないと言葉にすることはなかったけれど、きっと私がこの気持ちを伝えていればはっきりと言われていたと思う。
だから……私はずっと、素直な想いを紡ぐことができなかった。


幼なじみという関係を壊すのも、はっきりと振られてしまうのも怖くて、陽ちゃんの隣にいられる唯一の手段を使い続けてきた。少しでも長く彼の隣にいられるように、幼なじみの特権を使って過ごしてきた。

だけど、それも今日で終わり。


「陽ちゃん、ばいばい」


いつも交わす『おやすみ』ではなくそう言ったのは、私なりの強がりだ。返事も聞かずに部屋に入ると、両頬には涙が伝っていた。


朝も、昼も、夜も。
365日ずっと、陽ちゃんの隣にいた。
これからも隣にいたかった。


だけど……明日からその場所が他の子のものになるんだと思うと、涙が止まらなかった──。




【完】

Special Thanks!