田渕くんの呼びかけで、元一組の出席番号一番の青山くんがステージに上がる。
田渕くんがそうしたいか、男女を問わず〝恋人の有無〟を言うのが決まりになってしまったようだ。みんな恋人がいるかいないか必ずカミングアウトしていた。
そして、出席番号七番の岡原の順番はすぐに回ってきた。
(アイツは一体、何て言うんだろう……)
ここまできたら、彼女がいるかいないかを打ち明けるのはもう決定事項のようなものなので、当然彼も言わされる羽目になるのだろう。
真樹としては、想いを寄せている岡原のそんな話を聞きたいような、聞きたくないような……。
(そもそもアイツ、そういう話したがるのかな。しかも人前で)
彼女にはそれが疑問だった。
中学の頃の彼は、恋バナなど積極的にするタイプではなかった。女子から人気はあったけれど、鈍感だからなのか自分が「モテている」という自覚はほとんどなかった。
でも卒業して五年が経ち、大人になったから彼だって変わったかもしれない。
それに……、考えたくはないけれど、この五年の間に彼女ができていてもおかしくないのだ。――それはそれで、真樹は複雑なのだけれど。
『えーっと、出席番号七番、岡原将吾です。おととし定時制高校を卒業て、車の修理工やってます! 中卒で入ったから、えーっと。ん? 六年目? んで、彼女は……』
(えっ、どっち? どっち?)
真樹はドキドキしながら、彼の次の言葉を待った。――のだけれど。
『彼女は……ノーコメントってことで! 以上!』
「…………へ?」
「「「ええーーーーっ!?」」」
真樹が間の抜けた声を出したのと、すでにカミングアウトを終えている子達がどよめいたのはほぼ同時だった。次の瞬間、怒涛のようなブーイングが起こる。
「岡原、ズルいぞ!」
「ノーコメントってアリかよ!? そんならオレだってそう言ってたわ!」
「あたしだって、勇気ふり絞って『彼氏いない』ってカミングアウトしたのに!」
田渕くんがそうしたいか、男女を問わず〝恋人の有無〟を言うのが決まりになってしまったようだ。みんな恋人がいるかいないか必ずカミングアウトしていた。
そして、出席番号七番の岡原の順番はすぐに回ってきた。
(アイツは一体、何て言うんだろう……)
ここまできたら、彼女がいるかいないかを打ち明けるのはもう決定事項のようなものなので、当然彼も言わされる羽目になるのだろう。
真樹としては、想いを寄せている岡原のそんな話を聞きたいような、聞きたくないような……。
(そもそもアイツ、そういう話したがるのかな。しかも人前で)
彼女にはそれが疑問だった。
中学の頃の彼は、恋バナなど積極的にするタイプではなかった。女子から人気はあったけれど、鈍感だからなのか自分が「モテている」という自覚はほとんどなかった。
でも卒業して五年が経ち、大人になったから彼だって変わったかもしれない。
それに……、考えたくはないけれど、この五年の間に彼女ができていてもおかしくないのだ。――それはそれで、真樹は複雑なのだけれど。
『えーっと、出席番号七番、岡原将吾です。おととし定時制高校を卒業て、車の修理工やってます! 中卒で入ったから、えーっと。ん? 六年目? んで、彼女は……』
(えっ、どっち? どっち?)
真樹はドキドキしながら、彼の次の言葉を待った。――のだけれど。
『彼女は……ノーコメントってことで! 以上!』
「…………へ?」
「「「ええーーーーっ!?」」」
真樹が間の抜けた声を出したのと、すでにカミングアウトを終えている子達がどよめいたのはほぼ同時だった。次の瞬間、怒涛のようなブーイングが起こる。
「岡原、ズルいぞ!」
「ノーコメントってアリかよ!? そんならオレだってそう言ってたわ!」
「あたしだって、勇気ふり絞って『彼氏いない』ってカミングアウトしたのに!」