一週間に一度の環境科学の講義。私は陣内先輩の隣にいるだけで、会話をするだけで幸せだったのだけれど。

 人間というのは非常に愚かな生き物で、恋というのは酷く厄介な感情だ。満たされてしまうと、より多くを望んでしまう。

 学科の友人と昼食を食べているとき。湯船につかっているとき。ドラッグストアのアルバイト中、仕事がなくて暇なとき。朝早く目が覚めてボーっとしているとき。

 私はつい、陣内先輩のことを考えてしまう。

 彼は今、何をしているのだろうか。

 実験が大変だと言うようなことをぼやいていたから、必死でレポートを書いているかもしれない。

 最近買ったゲームがとても面白いとも言っていたので、徹夜でゲームをしているかもしれない。

 そういうふうに、先輩のことを考えていると、どうしようもなく会いたくなってしまう。

 せめて声だけでも聴きたいなどと思ったところで、陣内先輩の連絡先を私は知らない。まあ、知っていたとしても、連絡をためらって数時間が過ぎることは目に見えているが。

 火曜日の二限になれば、私は陣内先輩に会える。九十分間、先輩の隣にいることができるのだ。

 先輩にとって私は、同じ講義を受けているだけの、ただの後輩なのだけれど。

 今はただ、火曜日が待ち遠しい。

 静電気から、私の恋は始まった。