「うそ。耳赤くない? 夕日のせいじゃないよね」

「おまえ、俺をからかって楽しんでるだろ」

「ふふ。ばれた?」


 ジンは不機嫌そうに、眉間に皺を寄せて私を睨んできた。


「今度、ケーキ奢ってね」

「だから何も見てないって」



 狼みたいな、視線だけで殺せそうな鋭い眼つきだったけれど。ジンに睨まれるのは慣れているから、全然怖くない。

 軽口を叩いていると、不愉快だった気分が微かに紛れていく。



 個人病院の大きな庭が見えてきて、会話の終わりを感じた私は、歩道の端で立ち止まりジンと向き合った。


「どうしよう……。私、彼と別れようかな」


 独り言のように私はつぶやいた。


「何か心境の変化でもあったのか?」

「ちょっとね。変な手紙が来たのもあって。考え直してみたの」

「手紙?」