「おまえって、なんか危なっかしいよな」


 手を繋ぎ、指を深く絡ませて歩きながら智也が言った。


「知らないうちに、どっか遠くへ行ってしまいそうな感じ」

「そうかなぁ。小さな子どもじゃないんだから、急にいなくなることはないでしょ」

「例えば。学校の屋上に二人でいたら、俺が目を離した隙に──ふらっと校舎から飛び降りそう」

「……まさか。そんなことしないよ」


 口では否定しつつも、無意識にその光景を思い浮かべてしまう。


「でも、もし飛び降りたら。智也は一緒に来てくれる?」

「は? 心中とか後追いってこと? ──しねぇよ、そんなの。俺は死にたくねぇもん」

「……だよね」

「その前に、そうならないように俺がそばにいてやるから」


 私の腰を抱き寄せ、耳元にくちびるを寄せた。

 至近距離で、目尻の切れ上がった鋭い瞳に見つめられると。
 隠しているはずの気持ちを、すでに見破られているような気がしてくる。


「なあ、家に寄ってくか?」