「アクアマリンの天然石も所々に使われてるんだって。……あれ? 確か水色、好きじゃなかった?」
ぼうっとしていたのを気に入っていないと誤解したのか、朝陽くんは私の顔を覗き込んできた。
「ううん、好きだよ。ありがとう」
以前話したことを覚えていてくれたのだと、ちょっと嬉しくなる。
「紫と迷ったんだけど、こっちにしてよかった」
紫も嫌いじゃないけど……。
「紫色は欲求不満の色っていう噂もあるし。紗矢花はまさか、そんなことないよな」
悪戯っぽく、可愛く笑う朝陽くん。
間違っても、陽介みたいに勝ち誇ったようには笑わない。
「もう、朝陽くんがそんなこと言うなんて」
膨れたフリをして、私は彼のそばから離れ、先に教室へ戻った。
席につき、手の中にあるブレスレットをそっと握り直す。
たぶん、彼は私の本当の気持ちに気づいている。
朝陽くんは私をどう思っているの?
もしもアリサより先に出会っていたら、私を好きになってくれた?
……そんな都合のいいことがあるはずがないのに、密かに淡い期待を抱いてしまう。
忘れなきゃ、と思えば思うほど──。