あんな彼氏だけど、一緒にいるときはそれなりに幸せなのかなと思う。
 ──現実から、目をそむけていられるから。


「……だよね。それならいいんだ」

「朝陽くんは違うの? あんなに綺麗な彼女がいるのに」


 私の言葉に、彼は寂しげに微笑んで背を向けた。
 窓枠に腕を置いて外を見下ろす。

 もし、私に彼氏がいなかったら。
 きっと朝陽くんのことを抱きしめていたと思う。
 それほど、彼の背中は儚げだった。



「──そうだ。これあげる」


 振り返った朝陽くんは、紺色のカーディガンのポケットから何かを取り出して、私の手に握らせてきた。


「この前、小樽(おたる)に行ったときのお土産。もうすぐ紗矢花、誕生日でしょ」


 手を開いてみると、小さな白い包みが乗っていた。大きさのわりに少し重い。
 中に入っていたのは、水晶などの天然石が連なったブレスレットだった。
 透明感のあるライトブルーが、光に溶けて揺らめいて見える。