「じゃあ、お母さん行ってきまーす」
「行ってらっしゃい」
お母さんの声を背中にして、私は軽い足取りでアスファルトを踏みしめながら歩いた。
「おっはよー、莉々香ー!」
学校に着いて会ったのは、同じクラスでオタ友の里川 乃愛(さとかわ のあ)。
乃愛は、本当に日本人なの? って疑うくらい肌が白くて小さいのにふっくらした唇が印象的の女の子。
ツブヤイターを見る限り、私や乃愛みたいなオタクはもちろんわんさかいる。
そして、そのツブヤイターでは推しに可愛いと思ったもらうよう自分磨きを頑張っている人もたくさんいる。
まつ毛はクリンとしていて目が大きくて、口元は隠している人も多いけれど、それでもわかっちゃうくらいにお肌がツヤツヤの美少女がツブヤイターに流れてくると、女の私でも目を見張ってしまう。
「乃愛、おはよう!」
乃愛もツブヤイターに顔を出さないことがもったいなく見えるくらいの美人なのに、一度も顔出しをしていない。
「今日の、星夜くんのツイートはちゃんとチェックした?」
「あったりまえじゃーん。そう言う乃愛こそ、ちゃんと雄馬(ゆうま)くんのツイート見たんでしょうねー?」
「もっちろん!」
雄馬くん、というのは乃愛の推し。
雄馬くんは、スポーツ刈りが似合う野球少年みたいなイメージでもちろん星夜くんに負けないくらいファンが多い。