そのババァがどっか行った時、「帰ろや」とおかんに言っても、「ごめんな⋯ 拓海(たくみ)。ちょっと見ててな」とおかんが謝ってく
る。


おかんは俺に妹を渡し、台所に行った。
「座ってええんやで? 足痛いんやろ?」と、またあのババァの声が聞こえた。




「千代春のとこ、私立受かったんやって?」
「そうやねん、金飛んでくわ」
「偉いやんけ、小遣いあげるわ。正雄こっち来ぃや」
「ほんま?!やったぁおじちゃん好き!」
「俺んとこは金余ってるからなぁ〜、正雄ならなんぼでもあげんで〜」




ちっ、と、心の中で舌打ちをした時、泣きそうになってた妹が、俺の腕の中で「ふぇっ、」って泣き出しそうになった。


やばいと思って立ち上がった時には遅くて、まだ首のすわってない妹は、おっきい口あけて泣きだした。



急いで部屋から出ようとすれば、「家ん中勝手にウロつくな!!」と名前の分からんジジィが俺に叫ぶ。


「うっさいなはよ泣き止ませぇ」


どうすればいいねん、と、泣いている妹を見つめていた時、台所におったおかんが走って戻ってきた。


「すみませんすみません」と、謝りながら。