「ごめんなあ、ごめんなぁ、アホな頭でごめんなぁ⋯」
そう言って泣くお姉ちゃんを、何回見たんやろう。
「泣かんでいいで⋯」
「ごめ、」
「大好きやで⋯、どんな奈々でも、好きやから」
「っ、ごめん、」
姉ちゃんは、俺が〝拓海くん〟って分かった時、どんな反応するんやろう。
怒るんかな、
泣くんかな。
それとも、昔のお姉ちゃんに戻るんかな。
分からん、けど。
「す、き、すき、っ、わたしもすき、」
どんなお姉ちゃんでも、傍におろうと思う。
例え〝拓海〟を忘れても。
そんなお姉ちゃんと、この1ヶ月後。
式を挙げた。
お姉ちゃんはきれいさっぱり、次の日にそれを忘れた。
今日もまた、〝拓海くん〟の話が始まる。