そんなお姉ちゃんに、花束を買った。

結婚しようって言うために。




そんなお姉ちゃんは、いつもの様にそれを言う。



「あの子供、拓海くん、ほんまに嫌いやった」って。


分かってる、分かってるねん。

お姉ちゃんは、あの日の記憶をすぐに甦らせるから。

だから、毎日それを言うのは、仕方の無いことやって。



「同じ名前やのに、拓海とは大違い」

「そうなん」

「拓海⋯」

「なに?」

「ほんまに私と結婚してくれるん?」

「当たり前やん、結婚式あげよな」

「⋯うん、」

「今日、指輪とってきた、受け取ってくれる?」

「ほんまにええの⋯わたしで」

「当たり前やん、俺が奈々を好きやねんから」

「たくみ⋯」

「結婚しよ」