記憶障害のお姉ちゃんは、それを〝毎日〟話してくれる。
「なあ、拓海、わたし性格わるい?」
こてん、と、顔を傾けるお姉ちゃんは、今日も綺麗。
「ううん、悪いのはその親子やろ?」
「うん、お姉ちゃんが自殺したんあいつらのせいやもん」
「そうやな」
「今日もう帰るん?」
「うん、帰らんと明日朝早いから」
「寂しいなぁ」
そう言って俺の胸元へ、猫のように擦り寄ってくるお姉ちゃんの頭を撫でる。
お姉ちゃんの方が高かった身長は、とうの昔に追い抜かしてしまった。
こんなにも、小柄やったんか、と、今では思う。
「浮気したらあかんよ?」
そう言ってくるお姉ちゃんの頭をもう一度撫でたあと、その施設をあとにした。