ザッザッとホウキが廊下の板をこするたびにホコリが舞い上がり、太陽の光に照らされてキラキラと輝く。


これが宝石ならいいのにね。


なんて考えていると楽しくなってきて、知らない間に鼻歌を口ずさんでいた。


あの時、彰に止められた歌だ。


けれど今度はあたしの鼻歌を止める人はいない。


掃き掃除を終えて、今度は水に浸したタオルで床を拭き始めた。


モップなんてないから、腰をかがめて廊下を走り抜けていく。


ダダダダッ! と、自分の足音が大きく響き渡って慌ててスピードを落とした。


今の音で彰が起きてしまったかもしれない。


彰にはできるだけゆっくりしてほしいから、掃除も静かにしなきゃいけない。


そう考えると、掃除機がないのはよかったかもしれない。


雑巾がけが終わる頃には額にうっすらと汗が滲んできていた。


だけどまだ廊下の掃除が終わったところだ。


和室にもキッチンにもゴミは散乱しているし、トイレやお風呂だって水汚れがひどい。


蘭は休んでいる暇がなかった。


せめて料理ができるようにしようと思い、先にキッチンを終わらせることにした。


彰はあまり自炊をしないのか、生ゴミは卵の殻が少し残っている程度だった。


そのことに安堵しつつ、まずばゴミ袋を広げた。


足元に散乱しているゴミを丁寧に袋に入れていく。