学生時代に、つるんでいた坂本の友人である神田は、もの静かなやつだった。

 どちらかというと蒼に似ていて、こちらからつるんでいたら、話せるタイプの人間だった。

「だれ?」

 葵菜が頭に疑問符をつけながら、首をコテンと傾げていた。

「お子さんですか?」

「あぁ、葵菜。可愛いだろ。それにそんな堅苦しくならなくていい」

「そ……そう? なら、そうするね。で、お話大丈夫?」

「具体的になんの話だ?」

「私たちは、結菜ちゃんが蒼君を殺してしまったあの日の事を追っているの。そこで分かったことがあるんだけど、それを伝える事と輝君たちにあの日の事を聞きたい」

 なるほど、それなら、俺たちにメリットはある。

「分かった。なら、俺は協力する。けど、命に話してきていいか?」

「全然大丈夫。むしろ、命ちゃんもいてくれないと私たち的には困る」

 神田の呼び方が『メイメイ』ではなく、命ちゃんとなっていることに寂しさを感じながら、俺は葵菜をだっこして、命のところに行く。

「ねぇ、パパ、あのひとだぁれ?」

 葵菜は、神田に聞こえないくらいの声量で俺に聞いてきた。

 まぁ、子供は気になるよな。

「あの人は、パパのお友達だ。もしかして怖かった?」

「ううん。あおはもうなかないもん」

 葵菜は、小さい頃は極度の人見知りで、ご近所の方に会うだけで泣くくらいだった。

 けど、幼稚園に入ってから、人見知りはなくなり、こうして誰に会っても基本は泣かないようになった。

 そうして、葵菜の口ぐせはいつの間にか「もう泣かないもん」となっていた。

「ヒカル、おかえり。誰と話していたの」

「高校の頃、神田ってやつが居たの覚えているか? 神田(かんだ)陽菜(ひな)ってやつ」

「ヒナちゃん」

 命はどうやら、覚えていたみたいで、十年前と同じように彼女の名前を口にした。

「そうだ。神田が俺たちに話があるらしいんだが、命も来てほしい。いいか?」

「もちろん。何を聞かれるかは大体分かっている」

 蒼のことだと俺が言う前に命は察していたらしい。

「ヒナちゃん、久しぶり。私は全然大丈夫。アオナはいた方がいい」

「命ちゃん、久しぶりー! ありがとう! 葵菜ちゃんはどっちでも大丈夫だよー! 子供用の遊ぶ所があるし、もし一人にするのが不安だったら担当の人がいるからその人に預けれるし」

「そう。なら、行こう」

「じゃあ、車に乗ってもらっていい?」

 そう言って、神田は白いフリードを指さす。

 俺たちはそれに乗り、葵菜は初めての他人の車に興味津々だった。

「パパ、くるま! すごい!」

「すごいな!」

 神田は俺たちを微笑ましく見た後、エンジンをかけ、出発した。