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 十年前のあの日、蒼が救急搬送されたと知ったのは、夜中だった。

 俺はその時、そろそろ寝ようとしてしたところだったから、お袋から聞いて取り乱したのを覚えている。

 だが、取り乱したところでなにも俺には出来なかった。

 病院にいけるなら行きたかったが、面会時間はとうに過ぎて、ただ蒼が回復してくれることを祈るしかなかった。

 布団に入ってから、誰が何をしたのかずっと考えていた。

 だから、一睡も出来なかったと思う。

 しかし、俺の祈りは届くことはなかった。

 蒼は病院で息を引き取っていた。

「──アオイちゃんが、死んだ」

 命から告げられたひとことでもう、友達はこの世界に居ないのだと悟る。

 命は、俺に伝えるとき、本当に悲しそうな顔をしていた。

 うつむいていたから、泣いていたのかもしれない。

 学校に行く気はおきず、間もなくして蒼の通夜が始まった。

 生徒がぞくぞくと集まる中、飯島(いいじま)だけ来なかった。

「……心崎」

 そこには、坂本(さかもと)の姿もあった。

「……わりぃ、ほっといてくれ」

 坂本も神田(かんだ)の顔も見れなかった。

 皆ででかけた光景が脳内をよぎるから。

 そして、通夜も葬式もいつの間にか終わっていた。

 ただ、蒼が死んだことが悲しくて、自分がどんな状態だったか覚えていない。

 いつの間にか、俺は坂本たちとつるむことを避けていた。

 ほとんどの時間を仲間として過ごしていた俺たちのグループは、ふたつに分かれ、それぞれ別の友達とつるんでいた。

 俺と命の仲は、蒼が死んだことで影響はなかったが、それでもお互いなにかと気まずくはあった。

 蒼を殺したのは飯島だと知るのは最近になってからだった。

 あんなに仲よくしていて、しかも蒼と付き合っていた飯島がなんで蒼を殺したのかそんな不思議より、飯島が殺したショックの方が大きかった。