結菜に喜んで貰うため、僕は水族館の土産店に向かった。

 そこには、デフォルメされた大きなサメやイルカ、ペンギンなどのぬいぐるみが飾ってあり、そこそこの広さがある。

 結菜がトイレに行っている間、彼女が欲しそうな物を選ぶ。

 まず、頭に浮かんだのはぬいぐるみ。

 結菜はペンギンが好きだから、ペンギンのぬいぐるみにしようと思ったが、結菜はぬいぐるみは持っているから、ぬいぐるみは止めておいた。

 次に缶バッチ。

 クラスの女の子がアニメのキャラの缶バッチを筆箱などに付けているのを見ていた。

 でも、水族館の名前が入っていて記念にするにはちょうどいいのだろうけど、なんか見る度に思い出しそうで少し恥ずかしい。

 悩んでいる時間はあまりない。

 けど、結菜が喜ぶ顔を見たくて悩んでしまう。

 となれば、なにがあるのだろうか。

 あまり可愛すぎないものが好ましいと思うのだ。

 食べ物はどうだろう。

 ここの水族館の名前と可愛らしい動物のイラストがプリントされたクッキー箱を手に取る。

 なんだか、よくない気がして箱を元に戻す。

 冷静に考えてみれば、初デートのサプライズプレゼントがクッキーなんて黒歴史でしかない気がする。

「お客様、なにかお探しですか?」

 みつあみの店員さんが、僕に聞いてきた。

 きっと、悩んでいる僕を見かねて、聞いてきてくれたのだろう。

「実は、彼女にサプライズしたくて似合うものを探しているのですがいいものが見つからなくて……」

「なるほど。それは素敵なサプライズですね! 彼女さんが好きな動物はなんですか?」

 笑顔でその店員さんは僕に聞く。

「ペンギンです」

「そうですか、でしたら──これはいかがでしょうか?」

 そういって、店員さんが勧めてきたのはキーホルダーとキーケースだった。

 キーホルダーはデフォルメされたペンギンの形になっており、中は透明になっていてなにかが入っている。

 キーケースは、革で作られていておしゃれだ。

「このキーホルダーの中には換羽(かんう)という抜け落ちた羽根が、この中に入っているんです。どれも同じように見えますけど実はこれのように少し白い毛が混じっていたり、同じものはひとつもないまさにオンリーワンなキーホルダーなんですよ!」

 店員さんの熱意のこもった説明に少し引きながらも、これなら普段使いも出来るし、可愛いからいいなと思う。

「その、キーケースはなんですか?」

 店員さんはよくぞ聞いてくれましたと言わんばかりに、目を輝かせて、

「このキーケースは、ペンギンの希少な革を使っています。ですが、とても希少なため、サイズが普通のキーケースよりは小さく、お値段は値を張りますが使い心地は抜群です」

 また店員さんの熱意のこもった説明を聞いて、少し引いたが、同時にこの人は本当に動物が好きなんだとも思った。

「おー……。いいですね。ではこのふたつ買います。あとひとつ普段使い出来るのがあったらいいと思うんですけどなにかありますか?」

「ありますよ。これは高校生さんにオススメなんですよねー」

 店員さんについていくと、文房具コーナーに向かう。

 そのすぐ横には実物大のサメの標本が置いてあった。

 値段は諭吉三人分とそうとうの魚好きではないと手を出せない。

「ここです、ここ。高校生カップルさんに人気なんですよね。私のオススメはこれです」

 店員さんが勧めてきたのは、木製のペンだった。

 挟む部分には、ペンギンの飾りが付いている。

「このペンは、木製品なので高級感がありますし、複数個買ってお揃いでお使いになられるお客様もいらっしゃいますね」

 これは結菜は絶対喜ぶだろう。

「では、それも買います」

「お買い上げありがとうございます。さっそくレジにいきましょう」

 僕は店員さんについていき、会計をしてもらう。

「合計で4000円になります」

 僕は英世(ひでよ)四人分を財布から取り出して、店員さんに渡す。

「ちょうどお預かりいたします。レシートです」

「わざわざ選んでいただきありがとうございました」

 僕はレシートと結菜へのプレゼントが入った袋を受け取り、そう言った。

 この人がいなければ自分でも納得のいく買い物が出来ていなかったかもしれない。

 本当に助かった。

「いえいえ、お客様がお困りの際に我々がサポートするのは当然ですから」

 店員さんは笑顔を崩さず、そう言った。

「ありがとうございます」

 もう一度、お礼を言って土産店を後にした。

 そして、結菜が待っているであろうトイレの前に急ぐ。

 気に入ってくれるといいな。

 そんな期待を持ちながら。