そこは大きなウミガメがのんびりと泳いでいた。

「あはは……。あのウミガメ、蒼君に似てる~!」

「ねぇ、結菜。彼氏の顔をウミガメに似ているって酷くない?」

「別にディスってるわけじゃないからね? その、のんびりした顔をしているなぁって思ってるだけ」

「……のんびりとした顔ってなに」

 ウミガメコーナーのすぐ隣には、ヒトデやウニ、ナマコ、ヤドカリなどの生き物に直接触れることができるコーナーがある。

 ヒトデは砂浜にどっしりと構えており、ウニは黒く伸びたトゲがなぜか愛らしく見える。

 ナマコはモゾモゾと動く姿がイモムシみたいで可愛いねと結菜は言っているし、ヤドカリは二人揃って可愛い可愛いと連呼していた。

 生き物の触感や動きを、手に取ることで分かる。

 ヒトデはヒダのようなものが表面に無数にあってザラザラとした手触りだったし、ウニは近寄ると痛そうだが、それは野生に限った話で、ここのウニはそんなに痛くない。

 ナマコは顔がどこなのかあんまり分からなかったけれどその部分がプニプニしてるし、ヤドカリは殻をつつくとすぐに怯えて隠れる。

 結菜がでてきたところをつついて、ヤドカリの隠れる姿を見て少し楽しんでいた。

 僕らはこれだけでも楽しかったけれど、それより可愛いのはカワウソだ。

 この水族館にはペンギンとヒトデのような触れ合い以外にもカワウソと触れ合いことができる。

 ここが人気な理由ひとつにはこれがある。

 小さな体格に可愛らしいつぶらな瞳。

 僕は結菜を動物に表すのなら、ペンギンだが、彼女の性格を表すのなら、カワウソだと思っている。

「こっちだよ~、おいでおいでー! えらいえらいねー!」

 もう、結菜は自身のペットのようにカワウソを愛でている。

 キュキュと声をだして、結菜が持っている小魚をちょうだいと言わんばかりに見つめる。

 ついでに、僕も見つめられる。

「可愛い~! はい、ごほうびだよ」

 結菜から魚を受け取ったカワウソたちは半分ずつ仲間だろうか、友達だろうか、恋人だろうか、他の子にも分け与える。

 決して、独り占めしない性格にも好感が沸く。

「蒼君、一緒に住んだらカワウソ飼おうよ!」

 結菜との同棲生活は絶対に楽しい。

 僕は、輝かしい未来を夢見ながら、カワウソを愛でる結菜を見ていた。

 《第4話 完》