それから、僕らは13時から開始されるイルカショーを観ることにした。

 二人分のレインコートを買い、僕らはイルカショーが行われるプールへと向かう。

 そこは、野球場をひとまわりほど小さくした場所で、まだ開始時間より数十分ほど前なのにも関わらず、沢山のお客さんで埋め尽くされていた。

 前列は空いておらず、僕らは中列と後列のちょうど真ん中辺りで、観ることにした。

 司会の女性からの掛け声で手拍子と共に登場するイルカたち。

 尾びれを水面に打ち付け、容赦なく前列に水を飛ばし、歓声を響きあげさせる。

 フラフープを何度も潜り抜け、太陽と被さるように跳ねたイルカがボールにタッチし、水面に豪快にダイブ。

 水が嬉しそうに暴れまわり、前列の人たちはずぶ濡れになっている。

 僕らも水が結構かかって、結菜からキャーと歓声が響く。

「すっごい! すごい! わー!」

 一定間隔で置いてあるボールに向かってイルカたちが一斉に飛び跳ねる。

 水しぶきがもう、ステージ全体にあちこち巻き上げられ、僕らきも水しぶきがかかる。

 レインコートを着ていなかったら、きっと前列の人たちのようにびしょ濡れだっただろう。

 フィナーレとして、アザラシがでてきた。

 イルカと同じ速度で泳いだあと、二匹はキスをして終了となった。

 結菜は目を輝かせて、それは嬉しそうにしていた。

 イルカとアザラシと写真を撮る事ができ、記念に写真を撮ることにした。

 並んでいるときに、パフォーマーのお姉さんから、『仲良しですね』と言われ、反応に困ったが、結菜は僕の手を握って『私たち、付き合っています』と笑顔で言った。

 二枚の写真を受け取り、一枚は大切に財布の中にいれた。

 財布を開けたときに結菜が輝に貰ったロザリオに食いついた。

「これ、蒼君が前に着けていたロザリオだよね?」

「うん。輝に貰ったって説明した時だから……。皆で映画観に行った時かな」

「えっと、それ以外にも着けていなかったっけ……?」

 あまり覚えていないが、あの日以来は僕は着けていないはずだ。

「たぶん着けてないと思うよ。忘れているだけかもしれないけれど」

「あっ、そ、そうだね。確かにそうかもしれないね!」

 なぜか結菜が慌てている。

「と、とりあえず、イルカショー楽しかったね! 次は15時にペンギン触れ合い体験があるんだって」

「そうだね。あ、次は僕が行きたいところいっていい?」

「もちろん!」

 結菜の了承の笑みを得て、僕はある所に向かった。