一通り、進化コーナーを見終えた僕らは、次の場所へ移動する。
ゆったりとした曲が流れる場所で、優雅にイワシやエイ、サメ、そして誰も彼もの目を引く巨大なクジラまでがのんびりと泳いでいた。
「……綺麗」
結菜が隣で感激な声を漏らす。
その瞳には淡い青色の中に複数の大小の影が宿っていて、神秘的に見える。
─君も綺麗だよ
小説の中のイケメン主人公なら、きっとそう言うのだろう。
だけど、僕には無理。
きっと、僕じゃなくても無理な人は多いと思う。
「本当だね」
だから、僕は同調するだけにした。
「あっ、蒼君。あのイワシたち、ハートマークを描いていない? こう、こんな感じで」
結菜が空に指でハートマークを描きながら、片方の手で指さすところを見る。
確かに、イワシたちが繋がってハートの形に見えないこともない。
「説明ある! えーと、『イワシがハートに見えた方はその人と結ばれるでしょう』……! だって!」
一段と声のトーンをあげて、笑顔で結菜は話す。
確かにそれは僕らにとって嬉しいことなんだけど、お客さんがビックリしたような顔で僕らを見ていた。
それに気がついた僕は結菜に少し静かにするように頼んだ。
ちょっと、彼女の声は大きすぎた。
「ゆ、結菜。その、静かにしよう?」
「あっ」
そう言って、自分の手を口元にバツ印を作って当て、やっちゃった感をだして目をキョロキョロと動かす。
いちいち動作が可愛いんだよね、本当。
「う、うん。今度からちょっと気を付けるね」
気はちょっとじゃなくて、普通に気を付けていてほしいけど、いつでもマイペースで自分を貫けるのが結菜の強さだと思うから、僕は余計なことに口を出さないようにした。
結菜の声が抑えたからか、僕らに向けられる視線は微笑ましいものに変わっていた。
きっと僕もそんな空気に安心感を覚えて、結菜との時間を楽しむ。
「やっぱり、水族館はいいね!」
「本当にね。楽しんでくれて嬉しいな」
「えっへへー! 私も蒼君が楽しんでくれると嬉しいよ!」
「僕ら、本当に気が合うね」
「そりゃあ、ね。恋人だから」
そういって、結菜は暗い水族館内で僕の手を握る。
もはや、目を向けなくても分かる感触。
その温もりを僕の手で覆う。
決して、離れないように、離さないように。
「結菜、本当に付き合ってくれてありがとう」
そう言うと、彼女の動きがピタリと止まる。
そして、こちらを見る顔はキョトンとしていたが、徐々に朱色に染まり始め、最後にはタコみたいに真っ赤になった。
「蒼君、ありがとう。えへへ……。やっぱり、恥ずかしい……」
恥ずかしそうにはにかんでいた。
手を繋いでいて、はじめて分かる彼女の気持ち。
僕の事を本気で好きでいてくれている思い。
それを感じて、本当に幸福感に包まれる。
初デートだから、グタグタになるのかと思っていた。
だって、毎日二人でイチャイチャしているあの輝や長瀬がいうくらいだ。
それなら、恋愛初心者で恋心に翻弄されていた僕が、初デートがグタグタならないわけがないと思っていた。
我ながら、マイナス思考は直らない。
だけど、それなりに上手くエスコート出来ている気がする。
結菜が楽しんでくれればそれでいい。
一番の目標はそれなのだから。
小さな子供のように、はしゃぐ結菜を見て本当に楽しそうなんだと思った。
まだまだ始まったばかりだけど、これが君にとっての最高の思い出になるといいな。
僕はそう願いながら、強く彼女の手を握り返した。
ゆったりとした曲が流れる場所で、優雅にイワシやエイ、サメ、そして誰も彼もの目を引く巨大なクジラまでがのんびりと泳いでいた。
「……綺麗」
結菜が隣で感激な声を漏らす。
その瞳には淡い青色の中に複数の大小の影が宿っていて、神秘的に見える。
─君も綺麗だよ
小説の中のイケメン主人公なら、きっとそう言うのだろう。
だけど、僕には無理。
きっと、僕じゃなくても無理な人は多いと思う。
「本当だね」
だから、僕は同調するだけにした。
「あっ、蒼君。あのイワシたち、ハートマークを描いていない? こう、こんな感じで」
結菜が空に指でハートマークを描きながら、片方の手で指さすところを見る。
確かに、イワシたちが繋がってハートの形に見えないこともない。
「説明ある! えーと、『イワシがハートに見えた方はその人と結ばれるでしょう』……! だって!」
一段と声のトーンをあげて、笑顔で結菜は話す。
確かにそれは僕らにとって嬉しいことなんだけど、お客さんがビックリしたような顔で僕らを見ていた。
それに気がついた僕は結菜に少し静かにするように頼んだ。
ちょっと、彼女の声は大きすぎた。
「ゆ、結菜。その、静かにしよう?」
「あっ」
そう言って、自分の手を口元にバツ印を作って当て、やっちゃった感をだして目をキョロキョロと動かす。
いちいち動作が可愛いんだよね、本当。
「う、うん。今度からちょっと気を付けるね」
気はちょっとじゃなくて、普通に気を付けていてほしいけど、いつでもマイペースで自分を貫けるのが結菜の強さだと思うから、僕は余計なことに口を出さないようにした。
結菜の声が抑えたからか、僕らに向けられる視線は微笑ましいものに変わっていた。
きっと僕もそんな空気に安心感を覚えて、結菜との時間を楽しむ。
「やっぱり、水族館はいいね!」
「本当にね。楽しんでくれて嬉しいな」
「えっへへー! 私も蒼君が楽しんでくれると嬉しいよ!」
「僕ら、本当に気が合うね」
「そりゃあ、ね。恋人だから」
そういって、結菜は暗い水族館内で僕の手を握る。
もはや、目を向けなくても分かる感触。
その温もりを僕の手で覆う。
決して、離れないように、離さないように。
「結菜、本当に付き合ってくれてありがとう」
そう言うと、彼女の動きがピタリと止まる。
そして、こちらを見る顔はキョトンとしていたが、徐々に朱色に染まり始め、最後にはタコみたいに真っ赤になった。
「蒼君、ありがとう。えへへ……。やっぱり、恥ずかしい……」
恥ずかしそうにはにかんでいた。
手を繋いでいて、はじめて分かる彼女の気持ち。
僕の事を本気で好きでいてくれている思い。
それを感じて、本当に幸福感に包まれる。
初デートだから、グタグタになるのかと思っていた。
だって、毎日二人でイチャイチャしているあの輝や長瀬がいうくらいだ。
それなら、恋愛初心者で恋心に翻弄されていた僕が、初デートがグタグタならないわけがないと思っていた。
我ながら、マイナス思考は直らない。
だけど、それなりに上手くエスコート出来ている気がする。
結菜が楽しんでくれればそれでいい。
一番の目標はそれなのだから。
小さな子供のように、はしゃぐ結菜を見て本当に楽しそうなんだと思った。
まだまだ始まったばかりだけど、これが君にとっての最高の思い出になるといいな。
僕はそう願いながら、強く彼女の手を握り返した。