夏よりは多少、涼しくなったもののまだまだ暑い九月の朝。

 電車までの道は暑くていつもなら辟易(へきえき)するが、今日は全くしない。

 暑いと感じるが、不快感は全くなかった。

 地元の駅のホームで電車を待っていると、

『おはよう! 今から行くね!』

 と結菜からラインが送られてきた。

 可愛らしいペンギンが走っているスタンプもついている。

『おはよう。僕も今から行くところ』

『おっ!』

『到着したらラインするね』

『了解』

 と送って会話は終了したのと同時に駅に電車がやってきた。

 車内に入ると、微量な冷風が体に当たって心地よい。

 本当に楽しみだ。

 結菜はどんな格好で来るのだろうか。

 ボーイッシュ系のコーデも清楚系のコーデもなんでも着こなせる彼女はきっと今日も可愛らしい格好で来るのだろう。

 今すぐに鼻唄でも歌えそうなほど、僕は幸福感に包まれていた。

 新黄駅に到着するアナウンスが流れ、僕は車内から降りる。

『着いたよ。外に出て待ってる』

 この新黄駅には目印としてファミレスの看板が見えるところがある。

 そこに僕は移動して、結菜を待っていた。

『はーい。私も着いたから今から行きます』

 とラインが来て、僕はニヤニヤを隠せないでいた。

「ねぇ、ニヤニヤしているそこの格好いいお兄さん、私といいことしない?」

 後ろで大切な人の声がする。

 これはきっとそういうノリなのだろう。

「格好いいお兄さんにはそれはそれは可愛いペンギン好きの彼女が居るからあなたのお誘いにらお答えできません。あとニヤニヤなんてしてません」

「嘘ばっかり。すぐに顔にでるんだから。……あー! こんな堅苦しいしゃべり方は嫌だね!」

 耳元で艶っぽく囁かれたと思ったら、大声で叫ばれた。
 キーンと鼓膜に響いて、少し痛い。

「急に大声で叫ばないで、──結菜」

 僕が振り返ると、そこにはいつも以上に可愛らしい格好の結菜がいた。