飯島さんに先に告白されたが、こちらからもちゃんと告白し、付き合うことが出来た。

 全身に幸福感が満ちて、気分は最高だ。

 夕日が僕らを温かく包む。

「不知くん、もしかしてだけど」

「ん? どうしたの?」

「今までそわそわしていたのって、私が好きだったから?」

「うん、そうだね……」

「ちなみに、いつから好きになってくれたの?」

「皆でファミレスで勉強した時あったでしょ? その時に飯島さんの事が好きになった」

「そっか。んふふ……。なんか恥ずかしー!」

 飯島さんは顔を真っ赤にしながら、はにかむ。

 僕も釣られて、恥ずかしくなってくる。

「僕も恥ずかしいよ」

 二人揃って、恥ずかしくなると、次は笑いがこみ上げてきた。

「ふふっ……!」

「もう、私も恥ずかしかったんだからー! うふふ……!」

 あぁ、輝はこんな気持ちだったんだ。

 長瀬と付き合う事が出来た安心感。

 長瀬と隣で歩く事が出来る幸福感。

 それを輝は持っていたのか。

 最高の気持ちだった。

「もう、駅かぁ……。なんか、早いね」

「うん。今度から電車で登校するよ」

「本当に?!」

「うん」

「じゃあねー!」

 飯島さんは、駅へ歩いていこうとするが、一度、こちらに戻ってきて、僕の耳元まで近寄ってきた。

「……不知くん、だいすきっ!」

 返事を返した時と同じくらいの笑顔で顔を真っ赤にしながら飯島さんは駅へと歩いていった。

 今までと違うのは、何度もこちらに振り返っていたことだ。

 目が合う度に、僕らは微笑み合い、それがたまらなく嬉しくて、また笑う。

「じゃあ、ね」

 もう遠くに行ったはずの飯島さんの声が聞こえた。

「またね」

 そう言って、僕は自宅へと足を運んだ。

 家に帰るまでに輝と遭遇した。

「おっ、蒼! テストどうだった?」

 キャップに半袖・短パンの明らかに近所のコンビニに行く時の格好で自転車を漕いでいた輝は、自転車から降りるとそう聞いた。

「前より順位あがっていたよ。輝は?」

 僕が尋ねるとよくぞ聞いてくれたと言わんばかりの笑顔で、

「実はな……。赤点回避したんだよ!」

「よかったね。そうだ、一応相談もしたから伝えとくよ。飯島さんと恋人になった」

「だろだろ──ってマジか?! よかったな! 蒼!」

 バンバンと僕の背中を叩く輝。

 結構痛い。

 でも、よく勇気をだしたと言ってくれているようで、嬉しくもあった。

「本当にありがとうね」

「いやいや、俺も蒼に教えて貰ったしな。お互い様だ。蒼は(おとこ)になった。これから楽しいことが待ってるだろうな」

 僕もそう思う。

 飯島さんに告白して、勇気をだせた。

 そして、これから、楽しいことが待っているに違いない。

 飯島さんといれば、きっと毎日に色がついて、輝くに違いない。

「命にも伝えないと! もしもし、命。今、大丈夫か?」

 輝は何分か長瀬と電話をしていた。

「うん、分かった。んじゃ、俺ん家に集合で!」

 輝が電話を終えると、ついてこいと言われた。

 なになに?

「おっし、とりあえず行くぞ!」

「いや、どこに?」

 輝はそれから、一心不乱に自転車を漕いで、僕はその早さについていくのが大変だった。

 目的地は輝の家だった。

「アオイちゃん、ヒカルお疲れさま」

 輝の家に長瀬が居たのだから、驚いた。

「アオイちゃん、おめでとう」

 長瀬は一番始めに僕の想いを知ってくれていた。

 彼女が居たから、飯島さんと恋人関係になることが出来たのだろう。

「ありがとう」

 感謝しかなかった。

「大切な幼馴染みに(まも)る人が出来て私は嬉しい」

 長瀬はそれだけ言って、輝の部屋に入っていった。

「蒼も来いよ。今日は久しぶりにゆっくりしていってくれ」

 輝は笑って、階段を登る。

 手に2リットルのジュースとパーティーサイズのお菓子を持ちながら。