告白しようと意気込むのはいいが、どうすればいいのだろう。

 僕はそんな単純な事を考えていなかった。

 普通に好きだと言えばいいのだろうか。

 そりゃ、そうなんだろうけど、どこで言おう。

 さすがに教室で告白するのはまずいし、帰り道でも言おうか。

 恋愛小説をどれだけ読んだとしても、結局は娯楽の一部だったんたとここで知った。

 小説を読んだからといって何かが出来るようになるのではない。

 読んで心を変えることで、新たな自分へと繋げるのだとここで思い知った。

 だが、だからと言って小説を読むことをやめるわけではない。

 ただ、思い知っただけだ。

 朝、今日もジャムをたっぷりとのせたトーストをかじりながら、そんな事を考えていた。

 アカ姉は、夜、寝る前にバイト行ってくるとだけ言ったきり帰ってきていない。

 まぁ、こんなことは度々あるからどうせ、彼氏の家に泊まってでもしているのだろう。

 いつも通り、歯を磨き、制服に着替えて身だしなみを整える。

 いつも通りの動作のはずなのに、何度も歯を磨いたり、鏡の前で髪の毛を整えるのに時間を要したりするのは、僕が飯島さんに告白する覚悟が出来ている証拠なんだと確信した。

 そして、自転車をキコキコと漕ぎなから、学校に向かう。

 今日はテスト明けだからか、普段より人は少なかった。

 教室に着いても、誰も居らず、一度、職員室に向かって鍵をとってから再び教室まで階段を登るはめになった。

 無音の教室はとても新鮮だった。

 普段、誰かがいて話し声が聞こえる教室は僕以外誰も居らず、読書には最適だった。

 今僕が読んでいる小説は余命が一年の少女の物語だ。

 彼女と出会った図書委員の主人公が、彼女に触れる度、希望を持っていくというのが内容で、表紙の少女が飯島さんと酷似していた。

 この人の書き方上手だなぁ。

 あっ。

 書くで思い出した。

 久しぶりに小説を書いてみようかな。

 僕は、高校生になってから、小説を書き始めた。

 僕を主人公とした物語で、ある少女に出会って運命を変えられる──そんな内容で、ぶっちゃけ、二番煎じもいいところだった。

 もちろん、それは誰にも見せていないし、僕に見せる勇気がなく、メモアプリの中で静かに眠っているが。

 ちなみに、以前、飯島さんに書いている事を言った事があるが、もうその時から書いていない。

 僕は、読む方は得意であっても、書く方は苦手だ。

 今、ようやく思い出して、終わらない物語では可哀想だと思い、エピローグに繋がる起承転結の「転」の部分を書いている。

 ちなみに、今まで書いていたのが、10万文字程度。

 結構書いていることに驚きながらも、どんな感じにしようかと頭を悩ませている所だ。

「不知くん! おはよー!」

 声に驚いて、ビクリと肩を震わせてしまう。

 飯島さんが居たのが気が付かなかった。

「あっ、ごめん。誰かにライン送っていた?」

「いやいや、違うから大丈夫だよ」

「そっか。……ん? あ、前に言ってた小説?」

「よく覚えているね……。うん、そう。ずっと完結させないで放置していたから可哀想だと思ってね」

「確かにそうだよね。図書室の本も一巻で終わっているのがあって、ヒロインと主人公どうなっちゃうのー! とかモヤモヤしてしまう時があるから、どんな物語だって命があるんだし、終わりを迎えさせてあげたいよね」

 飯島さんが久しぶりに共感できる事を言う。

「うん。そうだね」

「不知くんところでさ、今日放課後空いてる?」

「空いてるよ」

 まさか。

「私も一緒に不知くんの小説考えていい? その小説、私も読みたい」