夕方の公園には、思い出がある。

 小学生の頃、輝に連れられて僕らはよく遊んでいた。

 あまり人が来ない荒れ地気味の公園だったため、輝が秘密基地みたいだななんて事を言っていたのを覚えている。

 そこで、僕らはよく缶けりをしていた。

 よく、色々な所に飛んでいって、探すのに苦労をしていた。

 僕は、(さび)色になったブランコを漕ぎながら、輝を待っていると、彼は走ってきたのだろう息を切らしていた。

 「蒼、どうしたんだよ。というかここ久しぶりだな」

 「まぁ、座ってよ。相談があるんだ」

 僕は輝をブランコに座らせる。

 チャリと今にも外れそうな鎖の音が公園内に響く。

 小学生の頃も、こうやって僕は輝と他愛もない事を話したっけな。

「なんだよ。相談って」

 蒼なら悩みが無さそうだけどなと笑いながら言ってくる。

 本当に一言余計だよ。

 僕は手始めに世間話をすることにした。

「テストどう? 大丈夫そう?」

「ヤバいかもな……。蒼や飯島たちが教えてくれなきゃ、たぶん赤点だらけだと思う」

 キコキコと小さくブランコを漕ぎながら、夕陽を見つめる輝。

「まぁ、頑張ろう」

「そうな」

「そういや、あれから長瀬は飯島さんたちと関わってるの?」

「おう、今日もスタバに行ったらしいぞ。テスト前祝いって坂本が言ってたからな」

「やっぱり、自分の彼女に友達が増えると嬉しいの?」

「そりゃな。命は色々あったじゃん。俺のせいでもあるけど。それで塞ぎこんでさ。悩み抱えて苦しそうにしてると何も出来なくてそれを見てるだけの自分が嫌になるんだよ。それを俺以外に吐き出せるヤツがいて本当に良かったって思ってる。まぁ、蒼が居なかったら俺は命や蒼をバカにしていたかもしれないからな。本当に出会いに感謝してる」

 きっと、輝は僕らに出会って自分の間違いを知ったのだろう。

 強がっているだけが自分じゃないと輝はその日気付いた。

 夕陽を見つめる輝みたいな人間になりたいとずっと思っている。

 輝は僕が思っているよりもずっと人を見ていた。

 そして、輝は誰よりも長瀬の事を好きなんだろう。

「蒼さぁ」

 なにと言う間も与えず、輝は、

「飯島の事好きなんだろ?」

 今から言うことを見抜かれて言われ、ドキリとした。

 沈黙が流れる。

 沈黙は金、雄弁は銀。

 きっと、輝にもバレているのだろう。

 それでも、輝は僕が答えるまで待ってくれていた。

「うん。僕は飯島さんの事が好きだ。好きなんだ」

 改めて、この言葉を言うと、胸が熱くなる。

「そっか……。いいじゃねぇか。俺は応援するぜ」

 伸びをしながら、輝は僕を見て、

「俺に大切な人を教えてくれた親友に大切な人が出来たんだ。今度は俺が蒼に教えたい」

 ニヤリと不敵に輝は笑う。

 不良っぽい目は初対面の人なら恐怖を与えそうだが、夕日に反射して、セピア色になった瞳には、優しさが含まれている。

 長瀬といる時もこんな目をしているのだろう。

 僕はこの時、本当にいい友達を持ったなと思った。