始業式は滞りなく終わり、担任の松本(まつもと)先生からの二学期の注意換気等を聞いてから、下校となった。

「不知くん! かーえろ!」

「坂本さんや神田さんたちや他のクラスメイトと帰らなくていいの?」

「クラスの子は大丈夫だよっ! 私あんまり関わりないからさ。桜ちゃんや陽菜ちゃんは一緒に帰るけど、不知くんもどう?」

「僕は全然いいけど。むしろ、嬉しいし」

「おっ、その意気だよ。その調子で二学期には彼女作れたらいいねっ!」

「そうだね」

 僕はあいまいに笑ってごまかす。

 飯島さんにしか、告白はしない。

 そう心に決めている。

 廊下をテクテクと歩いていると、坂本さんと神田さんにばったりあった。

「あっ、桜ちゃん、陽菜ちゃん。今から帰り?」

「そーやで。今から鞄取りに行くとこ」

「じゃあ、ここで待っとくね!」

 坂本さんと神田さんは鞄を取りに行き、数分後、戻ってきた。

 それから僕らは、電車まで歩き、電車に乗った。

「あれ? 不知って電車通学やっけ?」

「普段は自転車だよ。今日はたまたま」

「そうなんだ。私達は基本、電車だよねー」

「電車だとクーラー効いてて涼しいもんねっ!」

 たしかにそうだねと僕は答える。

 あ、そういえば、今日発売の新刊買うつもりだったんだ。

 帰ってからでいいか。

「不知くんは夏休み明けのテストどう? 大丈夫そう?」

「たぶん、大丈夫なんじゃないかな。それに、飯島さんに教えてもらったから、学年1位を頑張ってとりたいね」

「ふふふ……。私が取るからね。負けないよっ!」

 飯島さんがそう宣言したところで、僕が住む地域へ向かう駅の乗り換え駅に着く。

「ここで乗り換えなきゃ、じゃあね」

「じゃあねー!」

「またなー!」

「また明日ー!」

 三人に手を振って僕は、ちょうど駅に到着した乗り換え先の電車に乗って、自宅へと一度帰った。

 それから、昼ご飯を食べて、近所の本屋に向かい、新刊を購入した。

 可愛らしいショートカットの少女が図書室で本を並べている表紙の本だ。

 これは、小説投稿サイトの新刊コーナーに掲載されており、表紙を見た瞬間、買いたい衝動に駆られた。

 表紙の少女が飯島さんに似ていたというのもあったかもしれない。

 そして、僕は彼に電話をするのも忘れない。

 自分から話したことだ。

 心配をしてくれているし、早めに話した方がいいだろう。

 三度目のコールで彼は電話にでた。

『おう、蒼。どうした?』

「相談、したいんだけど」

 輝の声にザワザワと複数の人の話し声が聞こえる。

 きっと、僕のクラスメイトと遊びにいっているのだろう。

 朝、話していたのはきっとそうだと思う。

『あー、わりぃ。今、友達と出掛けてて。夕方だったらいけるけどそれでいいか?』

「うん。ありがとう」

『……蒼はやっぱり、変えられたな』

 最後、輝は意味深なセリフを残して、電話を切った。

 飯島さんは、いったい、今なにを考えているのだろうか。

 恋心は日を経つごとに膨れ上がる。

 輝に相談して、なにかヒントをもらえればいいけれど。

 そうして、夕方。

 輝から、電話をもらい、待ち合わせ場所を昔よく遊んだ公園にして、僕はそこへと急いだ。